COLUMNコンサルタントコラム

(第3回)営業スタイルを強化する仕組みを回す

UPDATE : 2017/03/22

時代は大きく変わりました。ほとんどの業界の営業現場の悩みは「今までのやり方では売れない」ということです。
そして、指導するリーダー自身も答えを持てないままで、日々メンバーに努力を促しているのが、より悩ましい問題です。

第1回目では、営業戦略が正しくなければ、高い戦闘力を持っていても活かせないということ。第2回目は、どう活動して
いけば営業成果を最大化できるかについて説明してきました。
第3回目は、目標達成、業績向上のためのマネジメントの仕組みについて説明していきます。

 

第1回目で解説したように、明確な強みを持つ営業戦略に基づいて営業の勝ちパターンが明確になった場合の
業績を高めていくための「営業スタイルの強化」を4つの仕組みに分けて解説していきます。

 

 

 

①商談を進める仕組み

営業の勝ちパターンとは、「成果に結び付く、再現性の高い、効果的な営業方法」ということです。
ただし成果に結び付く、効果的な方法でも、再現性が高くなければ組織として取り込めません。
ここでいう商談を進める仕組みとは、営業の勝ちパターンを個人に浸透させていく仕組みで、標準化できることと、
人材育成の方法が明確になることが条件になります。

「標準化する」とは、属人的で特定の人しかできないことではなく、誰にでもできるようにすることです。
私がよく取り組む方法は、営業プロセスごとに分解し、そのステップごとに行う標準的なキーアクションと活動事例と
ツールをセットにしてわかりやすくすることです。

例:
①初回訪問時はどういう準備とどういう行動が必要か
②ニーズヒアリング時はどういう項目をどのように聞き出すか
③クロージングを迎える時にはどういう項目をチェックしなければならないか

それらの活動にツールをセットして標準化するのです。営業は切れ目がなくて、活動が複雑で見えづらいといわれますが、
できる営業マンの行動は実に基本に忠実です。
業界によって、多少の差、強弱の差こそあれ標準的なキーアクションはそんなに変わりません。
業務が難しい・複雑なときには、分解して、単純化すれば、誰でもできるようになるのです。

営業プロセスごとの標準活動を整理しておけば、そのまま部下指導に役立ちますし、スキルトレーニングも
やりやすくなります。
そうして勝ちパターンを明確にすることが、営業スキルの底上げと効率化を実現することになります。
営業活動の効率性、効果性を高めるには、第2回目のコラムの「営業力5段階強化法」を参考にしてください。

 

②マネジメントを回す仕組み

営業マンの最大のミッションは目標達成です。
では期間内目標に対して、達成を前提に営業活動が計画されているのでしょうか。

実は営業のスタートラインともいえるこの計画があいまいなままで放置されている場合が多いのです。
行動計画としてのプランはあるでしょう。しかしその活動の延長に目標達成を確信しているのでしょうか。

日常の業務に追われ、顧客要求に応え、毎日忙しくしているのに、いつも数字が足りない。
そうして、残り時間が少なくなってから商談の着地点を考えてみても売上が足りない。
残り時間が少なくて、新たな仕込みが出来ない。ということの繰り返しが起きてはいないでしょうか。
これは目標達成のための仕組みが組み込まれていないのです。マネジメントする側が指導し、この仕組みを着実に
回して、誰でも達成できるマネジメントサイクルを回さなければならないのです。

 

それでは、目標達成を確信できる「マネジメントを回す仕組み」を説明いたします。

 

お気づきと思いますが「マネジメントを回す仕組み」とは目標管理PDCAを回すことなのです。
しかしながら営業マネジメントにおける効果的なPDCAの回し方は一般の場合と異なります。

次の3つがセットになっていなければなりません。
1) 目標達成のための受注シミュレーション(総量チェック)
2) アカウントプラン(個別攻略法)
3) アクションプラン(行動計画)

以下、重要なポイントだけ絞り込んで説明いたします。

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1) 目標達成のための受注シミュレーション(総量チェック)

そもそも商談数が足りなければ目標達成はしません。計画以上にラッキーが積み重なって数字が伸びていくほど
市場は甘くないでしょう。はっきり言います。業績が不安定な人は、最初の段階の商談のイメージングが弱いのです。

営業レースのスタートラインで不確定であっても商談が多くあれば多くあるほど、個別商談に固執することなく、
確率や時期によって柔軟に入れ替えることができます。

また、目標100%で商談総量をシミュレーションしているのは甘いのです。100%を目標にすれば、難しい商談や
不測の事態を差し引きして目標の80%達成が関の山です。
私が営業管理職をやっていたときは、全営業マンに140%の商談総量のシミュレーションをさせました。
なぜなら、最悪その7割くらいの着地でもほぼ目標の100%になるからです。

いつも好業績を維持している営業マンは、最低でも100%になるようにシミュレーションします。
不安定業績営業マンは100%を目標にしているのです。

もう一点、商談確度を格付け(Sヨミ:90%、Aヨミ:70%、Bヨミ:50%、Cヨミ:30%、Dヨミ:現時点0%)し、
商談の大きさ(受注予想金額)をかけて期間内着地点をシミュレーションします。

 

2) アカウントプラン(個別攻略法)

アカウントプランは受注シミュレーションで上げられた商談をいかにして受注確度を高めていくか、個別商談の攻略法を
考えることです。
「営業成果=量×質」とすると、受注シミュレーションが量でアカウントプランが質の部分です。

商談確度が「AではなくてB」、「BではなくてC」だということには理由があるのです。営業管理職はその課題を明確にし、
いかにその商談確度を高めていくのか商談指導をする必要があります。

顧客の環境把握、経営課題、商談関係者把握、競合との差別化、課題解決方法などあらゆる角度からの分析をし、
仮説を立てさせます。
また、情報整理の際にフレームやツールを利用するとよいでしょう。同じフレームやツールを使うことで共通言語で語れる
ようになり、情報共有がしやすくなります。

 

3) アクションプラン(行動計画)

これは一般的にいう活動計画のことですが、アクションプランにはマネジメントサイクルごとの計画が必要です。
6ヶ月で営業目標を立てている組織では、6ヶ月の半期計画、3ヶ月ごとの四半期営業計画、月ごとの月間営業計画、
週ごとの週間行動計画表と分けて作りますが、これをアクションプランと連動させて同時に回していきます。

マネジメントサイクルごとの計画を組織長が作るのは当たり前ですが、営業マン自身も自己管理という点で全て個別に
作らなければなりません。
組織によっては、SFAで週間と日報ばかり回していて長期プランがおろそかになっていたり、6ヶ月と3ヶ月は組織で回しており月間と週間は個人任せであったりと偏っているケースが多く見られます。

■マネジメントサイクルと連動した計画
【6ヶ月~3ヶ月】 受注シミュレーション、重要顧客(商談)の設定が中心
【3ヶ月~1ヶ月】 営業戦略、アカウントプラン、有効性が中心
【1ヶ月~週間】 営業戦術、効率性中心

それぞれ目的が違うので、全て別々に立案し回していかなければなりません。

 

もう一つのポイントは「P→D→C→A」ではなく、「C→A→P→D」の順で回すことです。
振り返りと反省があって、次の計画が立つのです。そのことが部下の成長につながります。

 

 

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③情報流通の仕組み

営業の結果としての「成果」を次につなげるための学習の仕組みが必要です。
良い結果にも悪い結果にも必然性があり、成功要因と失注原因があります。

成功要因は一般ケースに置き換えてパターン化し、横展開を図る。失注原因は原因を追究し、影響力の高い行動を
営業プロセスごとの標準活動に置き換え、同じ失敗は繰り返さないようにする。
誰にでも当てはまるように、科学と確率の問題に置き換えるのです。

この情報流通の仕組みの牽引役となるのが目利き役としての営業リーダーとマネジャーです。
ナレッジマネジメントの仕組みをアナログで活用できていない組織が、デジタルシステムの導入で
急に活用できるようになったという例は聞きません。
実際にこの仕組みが回り、効果的になっていくためには、評価の仕組みや表彰制度、企画部門のバックアップ、
情報の活用しやすい分類・体系化、価値観を醸成するためのコミュニケーション・マネジメントなど
多様な力学の作用の中で回していく必要があります。

 

④進化する仕組み

情報流通の仕組みを通じて成功確率を上げていくと営業効率は上がります。しかしベンチマークされることによる優位性の
喪失や予期せぬ成功の見落としで、環境の変化や顧客要望の多様化に後れをとることがあります。

結局パターン化できることの賞味期限は限られるのです。
従って、定期的に外部に目を向け、顧客の声に耳を傾け、市場の将来のあるべき姿を描き、仮説に基づいた事業戦略、
営業戦略の見直しが必要になります。
この仕組みが第1回の営業変革につながります。その中から具体的な「新しい営業の勝ちパターン」を生み出して
いくのです。

市場における戦いには、常に勝てる絶対的な戦略はなく、あくまで相対的優位性に影響されます。
顧客が認識した優位性のみが自社の武器として通用するのです。
ある切り口でトップに立った時点で真似される対象になります。

そして競争のなれの果ては差別化できなくなることです。当然、安さ競争に巻き込まれます。
強さを維持する為には、外部に目を向け、営業戦略を見直し続け、自社の中核能力を圧倒的に磨いていきながら
進化していかねばなりません。
回収している時(好調期)が投資しなければならないタイミングであると、常に2軸で考えるのが常勝組織のマネジャーです。

 

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最後に今回のコラムをまとめると、営業変革では以下の6つがキーポイントとなります。

【1】上位概念から考える
【2】2軸のバランスでポジションを決める
【3】有効性と効率性を分けて強化する
【4】情報収集力の重要さ
【5】仕組みをマネジメントする重要性
【6】循環的仕組みの中で進化する

営業の仕事は経営の重い責任を背負うことになりますが、外部の変化を肌で感じ、結果がすべてという潔さも
割り切れる意味でやりがいのある仕事です。
日頃からの学習の積み重ねが、お客様のお役に立ち、部下を育てる一番の肥料になります。
成長が止まった上司ほど部下を不幸にすることはありません。
自分で限界を創ることなく、さらなる成長を続け、会社の営業変革のリーダーシップを発揮して頂くことを
心より願っております。

 
【コンサルタントプロフィール】

和田一男
(株式会社ブレインパートナー 代表取締役 組織変革・営業変革コンサルタント)
北海道小樽市出身。(株)ヒューマン・キャピタル・マネジメント取締役。大学卒業後、1985年(株)リクルート入社。2000年独立し、(株)ブレインパートナー設立、代表取締役就任。経営力強化、実行力強化支援、営業力強化コンサルティング、実行機能としての組織構築、組織変革コンサルティング、人材育成、人事評価制度構築、目標管理制度運用支援を行っている。著書「30歳からの営業力の鍛え方」(かんき出版,2006年)、「ドラッカー経営戦略」(明日香出版社,2012年)

 

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