COLUMNコンサルタントコラム

不況期に求められる売れる営業マン共通の営業スタイルとは

UPDATE : 2016/08/02

モノが売れない時代、売れる営業マンと売れない営業マンの差はどこに表れるのでしょうか。
様々な業界の営業職の研修や営業強化のコンサルティングを請け負いますが、営業マンを観察していると、
こういう時代であるからこそ差が開いているように思えます。

売れている営業マンには共通の営業スタイルがあります。かつての「売り込み営業」「お願い営業」とは決別し、
提案型営業そして課題解決型営業に進化するためには何が必要なのでしょうか。
不況期でも強い今後目指すべき営業とはどういうスタイルについて書いていきたいと思います。

 

<2人の営業マン>

私は掛かってきた電話営業も含め、基本的に営業をすべて受けるようにしています。
外の営業の方々から学ぶこと、気づくことが本当に多いからです。

最近もある営業マンA氏から電話がかかってきました。
息もつかせず流暢なトークで商品説明をし、初めての電話にもかかわらず強い口調で、「ぜひお会いして詳しく説明
させてください」と約束を迫る営業マンでした。
あまりにも流れがよかったので、ついアポイントを受けてしまい、後日、事務所に訪ねてきました。

営業マンA氏は、30歳前後の見た目もしっかりした中堅営業マンでスーツもしっかり着こなしていました。
挨拶を簡単にすませると彼のプレゼンテーションが始まりました。
数々の資料の説明、パソコンを使った実例紹介、効果事例など、丁寧な言葉でスムーズな流れのプレゼンテーション
でしたが、なぜか乗り出して聴く状態にはなりませんでした。

特徴と効果は理解できたのですが、結局その後の提案は断ってしまいました。

 

数日後、偶然同じ業界、同じような商材を扱う営業マンB氏から電話がかかってきました。
電話での商品説明はあまりうまくありません。やたら会いたい、お役に立ちたいと迫るってくる若手営業マンです。
同情したわけではありませんが、そこまで言うならとアポイントを受けてみました。

後日、事務所で会ってみると、営業マンB氏は入社3年目とのことで何か頼りない印象でした。
しかし話し出すと、事前に弊社のホームページや代表のプロフィールなどよく研究していて、
出身地や趣味、サラリーマン時代の話、ちゃんと私の関心のある話から入り盛り上げてくれるのです。

その後は、仕事の中身やサービスの特徴、業界の構造など、質問攻めにあいました。
比較的ストレートな質問ではありましたが、会社の方針や今後の目標など、ある程度予想をして確かめるような質問を
してきます。
彼のプレゼンテーションは、資料のデータがあちこちに飛ぶなど商品説明もたどたどしく、とても上手いとは言えません。
しかし「何とかお役に立てる企画を考えます。社内の制作と相談してきますので、提案させてください、チャンスを下さい」
と迫られました。彼のあまりの一生懸命さに、約束をし、提案を受けました。
そして後日、彼がもってきた提案はよく考えられており、弊社の意向や課題が反映されていました。

結局提案を受け入れ、発注を行い、現在細部を検討中です。
二人の営業マンの違いは何でしょうか。

単に熱意に押されたわけではありません。営業マンA氏はよく訓練されていましたが自分軸なのです。
彼は商品を売り込みに来ていたのです。私の経験上、この自分軸な営業をするのはベテラン営業マンに多いタイプです。

営業マンB氏は、まだまだ未熟ですが顧客軸なのです。
お客様発想で企画を考え、社内の資源を引き出した総合力でお役に立とうと努力しています。
相手の懐に入り、相談しやすいスタンスと総合力でお付き合いしようという期待値を感じられ、弊社側の目的を捉えている
安心感が得られたのです。
<顧客軸、目的志向を徹底する>

P・F・ドラッカーの言葉に、
「企業が売っていると考えているものを、顧客が買っていることはまれである。(「創造する経営者」より)」という
有名なフレーズがあります。

営業マンは意外にもお客様の立場に立てていません。
営業マンの目的(いかにたくさん買ってもらうか)と、お客様の目的(できれば買いたくないが課題は解決したい)が
一致することは少ないようです。

お客様は商品・サービスを買うことが目的ではありません。それは手段で、購買を通じて課題解決することが目的です。
お客様の目的を満たすためには、(1)お客様の課題は何か、(2)その課題解決のためにどのようにお役にたてるか、
というように逆算して考えなければなりません。

 

仕事柄、様々な業界の営業職の研修や営業強化のコンサルティングを請け負います。売れている営業マンの取材を通して
「顧客軸、目的志向を徹底する共通の営業スタイル」が見えてきます。以下にいくつか事例をご紹介いたします。

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①食材メーカーのトップ営業マン
彼は小規模飲食チェーンに食い込み方がすごいのです。店商品・食材の特徴を説明するのではなく、
販売する店舗の特徴を捉えながら、お店の売れるメニューづくりの提案、料理責任者とひざをすり合わせて、
レシピ開発の協力をしています。
もちろん季節ごとの売れ筋をちゃんと把握しており、競合店研究にも抜かりがありません。

 

②ITシステムプロバイダーのトップ営業マン
システムプロバイダーの営業は長期にわたり、競合が何社も入り込んでくる業界です。
彼は業務プロセスに対する深い学習と広い人間関係づくりから得た情報をもとに、その企業の内部事情に通じた先方の
気付いていない業務改善や生産性向上、コスト削減の提案を行っています。
また彼の社内での上司の動かし方、関連部署の巻き込み方は評判がよく、パッケージの性能・機能に頼ることなく、
お客様の期待を超える満足感を提供しています。

 

③印刷会社の営業マン
彼女は納期の早さや安さによる競合との戦いを避けるため、飲食店や小売店のマーケティングを勉強し、
販売促進ツールの提案を行って実績を上げてきました。
最近は大手得意様企業の総務担当窓口からの紹介で、広報担当に食い込み、社内報の外部編集委員となり
社内印刷物作成・管理を任されています。

 

④建築工具販売会社のトップ営業マン
プロユーザー志向の工具販売の営業マンですが、単なる御用聞き営業の機能説明をするのではなく、
ホームセンターでは売り方・売り場の提案、工務店では使い方の指導を行っています。

 

⑤ホームページ作成会社の営業マン
単なるホームページの作成では差別化できないので、その会社の事業特性を分析し競合との差別化、特徴の表現方法、
販売促進、売り上げ拡大の提案を行っています。

 

⑥ハウスメーカーのトップ営業マン
彼は自社商品の構造や建材、設備の説明から説明するのではなく、お客様のニーズをとことん聴き込み優先順位を
つけ、新しい家を購入することで実現できる新しい生活スタイルの提案を行っています。
世帯主の意見よりも、利用者である奥様の意見に声を傾けること、相談相手になることがポイントだそうです。

 

⑦元リクルート採用広告営業の営業マン
彼は採用広告の提案だけではなく、学生の就職活動の動き、転職者市場の特徴、競合企業の動き、採用プロセス提案
ノウハウまでを含めて、採用成功のための支援を行っていました。
また積極的に経営者にアプローチし、提案企業の業界、顧客の特徴、競合会社の情報、業界の動向なども
情報分析した上で、採用活動を通じた経営課題の解決、将来に向けた経営ビジョンの実現までの道筋の提案を
行っていました。
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<提案型営業から課題解決型営業へ>

不況期に強い「今後目指すべき営業スタイル」とは何か。

「提案型営業」とは、お客様の顕在化したニーズに的確に応え、お客様主導で、お客様がわかりやすい手段を予算内で
提供することです。

今や提案型営業は当たり前になっています。そのため、お客様がすでに認識している問題(顕在ニーズ)を対象とした
営業では、予算が立ったとしてもコスト重視、企画も柔軟に対応するのが当たり前となります。
我々の周辺の教育研修業界でも3~5社コンペは当たり前です。それは普通に争うと1/5の確率になるのです。
確率を上げるため、しっかり情報収集し仮説を立て、解決策を提案しますが消耗戦に巻き込まれます。
コスト競争になり、営業すること自体で著しく体力を失います。

それに対し、「課題解決型営業」とは、お客様が明確に認識していない課題や上位目的(顕在ニーズ)に光を当て、
予算を超えた投資を呼び込み課題を解決していくことです。

お客様がまだ明確に認識していない課題や上位目的に光を当て、戦略的パートナーとしてお客様を巻き込み、予算を
超えた投資を呼び込み、未だ実現したことのない目的志向で課題解決していくのです。
つまりお客様を啓蒙していく営業なのです。そのため、予算を切り詰めなければならない不況期にも強い営業なのです。

課題解決型営業におけるお客様との関係は、パートナーもしくは指導者の立場で接することです。
このスタイルでは、最初からお客様の悩みに焦点を当て、競合とは競争することなく、独占することを目指すものです。
お客様の第一の相談相手になることです。そうすることで、お客様社内での競合を排除した横展開営業や深耕営業も
可能になるのです。
前項のトップ営業マンの事例では、食材メーカーの営業マン、印刷会社の社内報、ハウスメーカーの営業マンなどが
相談相手、深耕営業に相当するケースになります。

 

しかしながら、課題解決型営業は効果あるからといって、全てのお客さまに展開しようとすると無理があります。
自分の担当の中で、メイン顧客であったり、シェアアップ対象企業やポテンシャルある新規企業へのアプローチなどに
対し、優先順位をつけて実践していくとよいでしょう。
ただし既存顧客であっても、マインドシェアNo1またはNo2以外は、お客さまにとって存在感のない業者であることを
胸に刻みこんでおいていただきたい。

 

最後に、⑦の営業マンの事例は実際に私が営業マネジャー時代、経営者にこだわってアプローチして、メンバーとともに
提案していた事例なのです。
その経営者に「よくぞ外部の方が、ここまで調べて、わが社の将来に向けた課題を整理し提案してくれた。社内の役員でも
目をそむけている課題なのに。あなたの提案通り実行してください。期待しています。」という言葉をいただいた時のシーン
は今でも胸に刻まれていますし、営業マン冥利に尽きる充実感を味わったものです。

 
【コンサルタントプロフィール】

和田一男
(株式会社ブレインパートナー 代表取締役 組織変革・営業変革コンサルタント)
北海道小樽市出身。(株)ヒューマン・キャピタル・マネジメント取締役。大学卒業後、1985年(株)リクルート入社。2000年独立し、(株)ブレインパートナー設立、代表取締役就任。経営力強化、実行力強化支援、営業力強化コンサルティング、実行機能としての組織構築、組織変革コンサルティング、人材育成、人事評価制度構築、目標管理制度運用支援を行っている。著書「30歳からの営業力の鍛え方」(かんき出版,2006年)、「ドラッカー経営戦略」(明日香出版社,2012年)

 

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